「燃える氷」とか「white coal白い石炭」と呼ばれるメタンハイドレートは氷とよく似た見かけの固体物質で、メタンガスと水分子が、低温・高圧状態で結晶化したものです。メタンハイドレート中には大量のメタンガスが取り込まれ、1立方メートルの大きさの結晶が全部分解すると、160立方メートルほどのメタンガス(25℃、1気圧)が発生し、あとには0.8立方メートルの水が残ります。
(明治大学ガスハイドレート研究所HPより)
上の図は、メタンガスと水がメタンハイドレートに変化する温度と圧力(ここではメタンの分圧)条件を示しています。海洋環境での安定性を説明するため、縦の軸は水圧(下に行くほど圧力が高い)、横軸は水温で表現されています。破線は海水の温度です。赤い線はメタンハイドレートが安定に存在する温度圧力条件です。今、水の中にメタンガスがたくさん(過剰に)含まれている(つまり、気泡として存在している)と仮定すると、水深400m(圧力40気圧)では、水温が3.5℃より低ければメタンハイドレートが出来、高ければ、メタンハイドレートにはなりません。水深1000mの海底を考えます。海底の堆積物中には過剰なメタンガスが含まれていることがあり、そこではメタンハイドレートが出来ます。海底下の堆積物中の温度(地中温度)は、深くなるほど高くなります。温度の上昇する割合を100mで3℃とすると、海底下、約350mで、地中の温度は、メタンハイドレートの安定領域の外にでてしまい、もはや、ハイドレートは出来ません。つまり、水深1000mでは海底から350mまでが、メタンハイドレートの存在しうる範囲です。この図からは、水深2500mでは海底から600mまでハイドレートが存在しうることが分かります。この深度より深い地層中では、いくらたくさんメタンガスがあってもメタンハイドレートはできず、メタンは気泡として存在することになります。
(明治大学ガスハイドレート研究所HPより)
メタンハイドレートには2つのタイプがあります。一つは南海トラフに代表されるもので、海底から100〜400mほどのところに水平的に広がって分布します。これはしばしば砂層の中に発達するため、砂層型とか深層型と呼ばれます。その海底からの深度は、図2に示す「安定領域の基底深度」に対応します。つまり、層状に広がるハイドレート含有層の下限が、「安定領域の基底」で、水深が大きいほど基底深度は深くなります。音響調査(=地震探査)では「基底深度」に異常に強い反射面が出現し、これをBSRと呼んで、ハイドレート探査の重要な手がかりとしています。もう一つは日本海に代表されるもので、表層メタンハイドレートを呼ばれます。これは、深い所から、流体の移動通路(ガスチムニーと呼ばれる)を経て供給されるメタンガスによって、海底付近に形成された密集した塊状のメタンハイドレートです。このようなメタンハイドレートは海底下でのメタンガスの生成が非常に活発であることと関係しています。
(明治大学ガスハイドレート研究所HPより)