青山繁晴先生は幾度となく、「表層型メタンハイドレートは海底に出ちゃってて、埋まってても海底下100メートル位だから採りやすく、また太平洋側と違って砂と混じってなくて結晶がゴロゴロしてるから、海底から持ってくるだけですぐに実用化出来る。これを実用化させないのは日本の東京大学等の石油利権の学者、自前資源などない方が儲かる既得権益、それと癒着した官僚、石油メジャーの陰謀で邪魔されているからだ」
と仰ってきました。
んなわけねーのは皆さんもう分かってると思いますが、キチンと検証してみたいと思います。
表層型メタンハイドレートを実用化するためには海洋土木を使え!石炭のようにガーっと掘ればいい。日本の海洋土木は世界一!
などと青山繁晴先生は言います(千春博士もたまに言います)。
これがいかに荒唐無稽か、一緒に考えましょう!
国産石炭の埋蔵量は201億トン(可採埋蔵量144億トン)
実は日本は隠れたエネルギー大国だったのでした。日本の石炭輸入量は約2億トン。およそ100年分の石炭を実は自前で持っているのです。
石炭の一次エネルギー使用量は天然ガスと大差ありませんので、簡単に天然ガス100年分と同等のエネルギー量の石炭が日本国内にある!という理解でも良いと思います。
しかし、露天掘り出来る一部の炭鉱を除いて、コスト面から海外から輸入した方が安い!との理由で殆どの炭鉱は閉められました。
陸上にある石炭..。深海底のメタンハイドレートより取り出しやすそうなのにな。運搬も簡単なのにな。エネルギー効率も石油と比べて悪い!と言われるし。
せっかくの自前資源なのに、海外からより良く安い石炭を買った方がおトクなんて寂しいな。
石炭は掘らないくせに、表層型メタンハイドレートを採ろうとする我が国ニッポン。
果たして石炭と同じように掘れば簡単にコスト安の資源となるのか!?世界をひっくり返す事は出来るのか!
「石炭を掘るイメージで掘ればあっという間に実用化!」と言ってきた青山夫妻の話は本当なのか!
単純に石炭とメタンハイドレートのエネルギー量を比べてみましょう!!
まずは体積で比較(発熱量MJで比較)
「前提条件 国内石炭22.5MJ/kg 質量0.8
メタンハイドレートm3=メタンガス164m3
メタンハイドレート質量=0.91」
・国内産石炭1m3=約18000MJ(メガジュール)
・メタンハイドレート1m3= 6560MJ
なんと!単位体積で比較したら、石炭の方が約3倍もエネルギー量が!!同じ大きさの石炭とメタンハイドレートの発熱量は石炭の圧勝!!
なんてこった!
ならば重量ではどうだ?
・国内石炭1kg=22.5MJ
・メタンハイドレート1kg=7.2MJ
うわ!重量比で比べも3倍近い差がついた!なんてこった!同じ重さの石炭とメタンハイドレートでは発熱量で石炭の圧勝!!
メタンハイドレートのほとんどは水
「メタンハイドレートはいわば天然ガスが凍ったもの」と青山繁晴先生はよく仰りますが、ハイドレートのクラスレート構造を占めるそのほとんどが「水分子」なんです。
実際、メタンハイドレートの約85%(重量比)が単なる水です。メタンハイドレートそのものの採掘というのは、いわばほとんど「水」を採ってるみたいなものです。
石油と比べてエネルギー量が少ない!と散々文句を言われる石炭よりも更にもっともっとエネルギー量が少ないメタンハイドレート。
ハイドレートのまま採掘、輸送するのは完全にコスト面でアウト!!石炭を運ぶのにも他資源と比べて高い!と言われるのに石炭の3分の1しかエネルギー量のないメタンハイドレートを輸送するなんて馬鹿みたい!
これを「何をするにも陸上の10倍はコストが掛かる」とされる海底、しかもさらにさらに深度1000m級の深海底から採って来よう!とする日本政府?!頭は大丈夫か?!
単なる技術のブレークスルーで何とかなるレベルでは有りません。少なくとも「石炭と同様に掘る」イメージでは絶対に実用化は出来ません。
深海底へどこでもドアで行けるようになったら採掘が可能になるかも!!
しばしば青山繁晴先生は表層型メタンハイドレートを「金塊」に例えられます。
砂層型を砂金とし、その比較として「日本海側は金塊なんだから価値がある!」という例えが得意です。
「日本海のメタンハイドレートは表層に出ちゃってる、水中ロボットカメラで海底を見ると白いケーキのようなメタンハイドレートが見渡す限りに拡がっていた!」
「海底から持ってくるだけですぐ近くの火力発電所で燃やせますから、こんな夢のような資源は他にない!」
と、青山繁晴先生は仰います。
メタンハイドレートの塊は価値があるのか。果たしてどれくらいの価値があるのか、一緒に考えましょう!
日本が現在輸入しているLNGはメタンガスに換算すると1日辺り約3億m3になります。
とても膨大な量の天然ガスです。
イメージしやすく例えると、その体積は一片が670mの正立方体になります。
もし、表層型メタンハイドレートの塊だとしたらどれくらい必要なんだろう?と思いますよね。
メタンハイドレートにはその体積の約164倍のメタンガスが含まれます。
3億m3を164で割って計算すると...183万m3。
一片が約120mの正立方体になります。
これでも中々イメージ出来ませんね。
では標準的な体育館の体積で例えてみましょう。
開口28m × 奥行き45m × 高さ13mとします。
だいたい皆さんが過ごしてきた体育館の大きさです。
この体積が16380m3。
これで割ってみましょう。
1830000m3÷16380m3≒111
体育館が110個ほど。
日本の輸入天然ガスを表層型メタンハイドレートで全部賄おうとしたら、表層型メタンハイドレートの100%純粋な塊が「毎日」体育館110個分必要になります。
ちなみに「金の延べ棒」とも呼ばれる金塊1kgのゴールドバーの値段は約450万円。
同じ大きさのメタハイの塊は100mmbtu=9.4ドル換算で0.4円です。
資源がそこに見えてるから、それがお宝とは思わないで下さいね。